コラム「人事とIT」

第3回 「クラウド」は人事にとって夢のシステムか?

2012.09.20
お客様先に行って「御社のシステムはクラウドに対応していますか?」と聞かれないことがないくらい、「クラウド」という言葉が一般的になりました。ただ、そうした質問の後に人事の方が、「これからのシステムはクラウドですよね」とおっしゃるのを聞くと、どうにも居心地の悪さを感じます。

話は8年前に戻ります。

当時はWeb技術が注目を集めていて、多くのビジネスアプリケーションが「Web化」を目指していました。

前職のIT企業でも、転職する数年前に、クライアントサーバー型(システムを自社内のサーバーに置き、各ユーザーのパソコンにはそのシステムを使うためのプログラムをインストールする形のサービス)のグループウエアから、Webベースのものに移行していました。私自身がそうした動きも見ていましたので、なんとなく、「これからのシステムはWebだよね」と、実際に口にしていました。

そして、今の会社に入社。まずお客様に提供することになるシステムの説明を受けると・・・、Webシステムではなくクライアントサーバー型のシステムでした。「これからのシステムはWebベースだよね」と言っていた私にとっては、正直軽いショックでした。

しかし、しっかりと話を聞いてみれば、システム導入の目的によって、相性のいい技術と良くない技術があるということ。機密性が高く、複雑な処理が求められるシステムには、当時の段階ではクライアントサーバー型が最適であることを、噛み砕いて説明をしてもらいました。技術やサービス形態が先にくるのではなくて、やりたいこと、達成したい目的に合わせて、技術を使い分けていく知恵が必要だということです。納得しました。

さて、そうして営業に出ていった私は・・・。説明を聞く前の、以前の私のような人たちの洗礼を受けることになります。「今時、Webじゃないんですか?」という、反応です。「完全Web対応!」ということを前面に出している同業他社も少なくありませんでしたから、なかなかお客様に理解してもらえない日々が続きました。

あれから8年、今はどうなっているか・・・。結論からいえば、「Webベースのシステムか否か」が最初の選考基準に上がってくることはほとんどありません。

私たちが提供している人材マネジメントシステムは、現在もメインの部分はクライアントサーバー型の仕組みを使っています。しかし、同時にWeb技術が合うエリアには、Webシステムを活用しています。一方、お客様サイドでも、システムへの理解と経験が深くなり、私たちのメインのシステムをご覧になって、「これだけの複雑な処理を、このスピードで行うにはクライアントサーバー型ですよね」と理解してくださいます。

「Webシステムじゃないと売れない!」と、弱音を吐いていたのは何だったんだろうとふと当時を思い出すことがあります。

今、お客様が「これからはクラウドですよね」とおっしゃることに居心地の悪さを感じるのは、この経験を思い出すからです。もし、これを読んでいただいている人事の方が、「これからのシステムはクラウドだ」と漠然と考えていらっしゃるとしたら、少なくともまず、以下のことを理解されることをお勧めしたいと思います。

口にした「クラウドだよね」の「クラウド」は何を指していて、その強みと弱みは何なのか。例えば・・・

「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の違い。それぞれの特徴
「クラウド」サービスの種類(SaaS、PaaS、IaaS)とその違い、それぞれの守備範囲

それは、今実現したいと考えているエリアに、現在の「クラウド」で提供されるビジネスアプリケーションは、最適な技術と手法なのか、運用も含めた費用面(短期・長期の視点)はどうなるのか、リスクは無いのか、という点をよく考えてみることが重要だろうと思うからです。

「クラウド」を否定しているわけではありません。これからのシステム構築に、「クラウド」は必ず検討されるものの一つとなるでしょう。その結果、ある分野では「クラウド」の技術が一番という結論もあると思います。ただ、最初から、「クラウド」というのは「"何でも"実現できる上に、コストダウンもできる、究極の、夢のような技術だ」と決めてかかってしまっているとしたら、少し冷静に考えてみる必要がある、ということです。

技術にも「適材適所」があります。「流行り言葉」はそれほど単純ではないことがあります。そして、ITベンダーのビジネスモデルという視点から見直してみれば、ユーザーが得られるものと得られないものが見えてきます。このあたり、システム導入の際には、是非思い出してみてください。

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