コラム「人事とIT」

何故、「タレントマネジメントシステム」で成果を出せなかったのか?今、日本の人事が求めるべきシステムとは?(2)

2018.03.30

【システム名が変わったからと言って、無条件に一元化の課題は解決しない】

まず、「タレントマネジメントシステム」という名前になったからといって、前回お話した「人材データの一元化」の高いハードル を、無条件に超えられるわけではない、という点を見落とさないことが重要だ。
意外に名前のイメージに惑わされてしまうケースがある。「タレントマネジメントシステム」という名前なのだから、自社のマネジメントで必要だと思うことはすべてしっかりカバーできているはず、という思い込みだ。

実際に、「成果を出せなかった」企業の話を伺うと、実は「実効性のある人材データの一元化」のレベルで躓いているケースが少なくない。
タレントマネジメントシステムを導入したのに・・・、

◇データの履歴管理ができなかった
◇本日時点でのデータしか取り出せなかった(基準日設定ができない)
◇そもそも管理できない項目があった
◇社内で共有できるようなレベルの組織図が作成できなかった
◇他システムからのデータ取り込み連携ができなかった、あまりにも面倒な作業だった
・・・等々

実は、これらは従来の「人事システム」で起きていたことと同様の問題なのである。
その構造的な問題を理解し解決していなければ、どんな名前のシステムを入れても、成果への一歩は踏み出せない。
 (一元化の超えるべきハードルの詳細については、「人材データの一元化は想像しているよりハードルは高い、が、それを超えるだけの価値がある。」をお読みいただきたい。)

【そもそもタレントマネジメントとは何をすることなのか】

そもそもタレントマネジメントとは何をすることなのか。様々な企業の人事の方々とお会いしていると、各社各様の考え方があり、自社にとって有効な「タレントマネジメント」はどういうものなのか、 試行錯誤をしている企業がほとんどである、というのが実感値だ。

 一方、「タレントマネジメントシステム」のパンフレットや説明資料などを見ると、

要員管理/報酬管理/目標管理/業績管理/コンピテンシー・能力管理/評価支援/
学習支援(e-learning)/異動・配置支援/キャリア開発支援/後継者計画/
リテンション支援/従業員SNS・・・といった支援機能が並ぶ。新しいところでいけば、社員のエンゲージメントや組合せの診断を提供する機能などが提供されることもあるようだ。

 確かにこうした活動は、人材のモチベーションを上げる、組織を活性化させるために有効な働きをすると言われているし、実際に多くの企業が取り組んでいる。しかし、「こうした活動が完全な形で出来上がっていて、現段階でまったく問題がない。あとは粛々と運用するだけ」、と言い切った人事に、私はほとんどお会いしたことがない。今までの活動の問題点は何か、どのように改善すればいいのか。そもそも、それは自社に必要なのか。必要だとしたら、どのようなデザインをすればいいのか・・・。大半の人事や経営層の方々が、試行錯誤しながら、走り続けていることが、ほぼ100%である。

 そうした状況に対して、多くのタレントマネジメントシステムが、それぞれの活動の一般的なベストプラクティスを提供しているというのが現在の構造だ。もちろん、そこで提供されているプロセスに合わせていくことで、自社のタレントマネジメントの方向を探る、という考え方もある。ただし、システムが提供しているベストプラクティスが、自社に完璧に合う保証はない。「試して方向を探る」ことを意図するのであれば、試用期間と判断基準を設定し、合わない部分があったときの対策方法を講じておくところまで計画する必要がある。

しかし、残念ながら、合わないことが分かった場合に修正がきかないシステムも多い。もしくはそれ以前に、合っているか合っていないかの検証をする術がないというケースもある。合わなくなっていくプロセスを手作業で対応する割合が上がっていき、結局システムが担っているのはシンプルなプロセス管理のレベルで終わってしまうケースも少なくない。そして、「導入したけれど、利用を止めてしまった」「標準的な個人情報を閲覧する電話帳のようなものになっている」「目標管理の運用にだけ使っている」といった、残念な結果に終わる。

 マーケティングの世界でよく引き合いに出される、「ドリルと穴」という話がある。ドリルを買いにきた顧客に、ドリルの性能やスペックを説明してもだめだ。なぜなら彼らはドリルというものを買うことが目的ではなく、家に帰って適切な穴をあけることが本当の目的だからだ。だから、穴を開ける目的や壁の素材といった話を聞くことこそが、ドリルを買ってもらうために重要なことなのだ、といった主旨の話だったと記憶している。

 これはあくまでマーケティングの話ではあるが、現在のタレントマネジメントシステムを巡る状況に対しても、示唆に富んでいるのではないかと思う。そもそも何故「タレントマネジメントシステム」(ドリル)を買おうとしているのか?そもそも、今必要なのは「タレントマネジメント」(穴)なのか。どんな「タレントマネジメント」を目指すのか(どんな穴を開けたいのか)。「タレントマネジメント」をしていく組織環境やビジネス環境はどうなっているのか(穴をあけようとしている壁はどのような状態なのか)。組織環境(壁の性質)を考えた場合、本当に一般的に言われている「タレントマネジメント」(市販のドリルで穴を開けること)が自社(壁)にあっているのか?・・・

 こうした一歩手前の議論が不十分なままに、「タレントマネジメントシステム」(市販のドリル)を買うことが前提となってしまっていて、製品調査やコンペ・選定では、「タレントマネジメントシステム」(ドリル)の性能やスペックの比較が話の中心になっている・・・。そして、結局、上記のような残念な結果に陥ってしまう。

 そうした状況に陥らないために、2つのことをしっかりと理解しておく必要がある。

自社のタレントマネジメントは、パッケージベンダーが提供するベストプラクティス
 に合わせる形だけで、本当に経営に貢献できるのか。


今経営に貢献できる人材・組織マネジメントをしていくために必要な武器は、
 そもそもどういうものなのか。


この2つである。


何故、「タレントマネジメントシステム」で成果を出せなかったのか?今、日本の人事が求めるべきシステムとは?(2)完 >> 自社のタレントマネジメントはベストプラクティスに合わせる形で本当に経営に貢献できるのか

2018年3月30日

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