コラム「人事とIT」

RFPの落とし穴。時間と工数をかけたにも関わらず、システム選定に失敗するのは何故か?(2/4)

2018.07.09

1.「担当者全員」の「望み」をかなえようとする。

 

【どんな問題が起こるのか】

 

 ここでは、2種類の問題が起きています。

 

 ひとつ目は、「この機会に人事の業務を洗い出そう」と考え、「漏れがないように」と、人事関係者を網羅して話を聞き、その結果システムがカバーする範囲が拡がっていき、「欲しい機能」のカテゴリが増えていくというパターンです。

元々は「自社の人材・タレントマネジメントを強化するため」が、メインの目的であったはずなのに、そこには直接は関係ない業務や仕組みの話が入ってきます。目的達成とそれらの繋がりが明確に見えていれば当初の範囲が拡がることもありですが、実際には、目的達成との繋がりがわからないままに、要望だけが増えていくという状況に陥ります。その結果、そもそものメインの目的の存在が薄れ、目指している方向がバラバラの要望機能が並んだリストができることになります。

 

 ふたつ目は、「誰に聞くべきかが良く考えられていない」、「関係者の意識づけが誤っている、目的が共有できていない」というパターンです。「今、現場でシステムを使っている人」と「新しいシステムを活用して、マネジメントの質を上げるタスクを負っている人」を、無自覚に並列に扱っているケースも珍しくありません。目的に対して正しい要望を出せるのはどういう人なのかを精査するというプロセスが抜け落ちているのです。

 

 そうなると、出てくる要望内容のレベルの高低がバラバラで、中には、「システムが入れば、そもそも業務として必要なくなるのでは?」といった、単に今欲しいと思っている機能や、「その資料は変化・変更が多いから、手作業として残した方がいいのでは?」という、将来の変化可能性やビジネスへのインパクトをとった視点が抜け落ちている要望も紛れ込んできます。しかし、元々の意識合わせができていないので、リスト化されてしまった要望の優先順位づけや、適切な要望の削減を後から行うのは困難です。

 

 こうした問題をはらんで出来上がった「要求機能」を「機能要件一覧」として一律に並べ、その実現可能性を×等で回答してもらい、マッチング率を計算。その数字が高いベンダーの提案が、「自社に合っている」と判断されていくことになります。もちろん、他の要素も加味されるでしょうが、例えば、90%と65%という数字が並んだとき、この差をひっくり返すことは容易ではありません。

 

 本来の目的から考えれば絶対に外してはいけない機能と、本来の目的とのリンクが薄い機能や、担当者の「あったら嬉しい」というレベルの機能が、すべて1として数えられ、無味無臭の数字に置き換えられてしまい、その高低によって評価されてしまっているわけです。リリース後に「どうも最初に期待していた効果が出せてない」と感じるようになるのは、決して不思議なことでありません。

 

【こうした問題を回避するにはどうしたらいいのか】

 

こうした失敗を回避するために、以下のプロセスを踏むことをお薦めします。

    まず、高いレベルのメインとなる目的、今回のシステム化で達成すべきことは何か、を明確にして、すべての判断の基礎とする。

    大きな目的達成のために、具体的にシステムが担うべきことを整理する。

           例:通常、以下のような3つの役割が挙げられてきます。

          「業務の効率化・業務の質の均一化」

                 「意思決定・人材・組織マネジメントの質の向上」
                 「好ましい行動の促進・好ましい文化の醸成・現場マネジメントの強化」

    上記を踏まえて、誰に何を伝えて要望を聞くのかを整理する。要望を聞く人には、①②を理解してもらう。

    集まった要望を、中目的毎に整理し、大目的達成に対する重要性と照らし合わせて優先順位をつける。また、本当にシステム化が必要かどうか、重要度、起こる頻度などから判断する。

     ▶  リストに挙がってきた機能は、②で挙げた役割のどのカテゴリを担うの

     か。その役割は目的達成とどのような繋がりがあるのかないのかを整理

     することが肝要です。(この点についての詳細は、「人事がシステムに

     期待すべき効果と、優先順位について考える」にて解説をしています。

     :近日公開予定)

     ▶ 「本当に今システム化が必要なのか」「システム化の効果はどれほど

                   期待できるのか」

      ①  の目的と照らして、優先順をつけたり、リストからはずします。

     優先順位の高いものを確実に実現できるかどうかにフォーカスして、要望機能をまとめます。




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2018年6月30日

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