コラム
人材・組織マネジメントにおけるデータ活用で成果を上げるために必要なことを考えます
人材データの一元化は想像しているよりハードルは高い、が、それを超えるだけの価値がある。
2018.03.06
「人材データの一元化」とは何を指すのか?
「人事システム」「タレントマネジメントシステム」と呼ばれる、人材に関するデータを扱うシステムが数多く出回っている現在、「人材データの一元化」など、 当たり前の話だと考えている人も少なくない。実際に、「単なるデータの一元化でしょう?その程度なら自分でも作れる」、 「一元化くらいなら、どのシステムでも大差ないよね」と、直接言われることも少なくない。 しかし、15年近く日本企業の人材データ活用の支援に携わってきた経験から、人材データの、本当の意味での「一元化」の実現はそれほど簡単に実現できることではない、というのが実感値である。
話がずれてしまわないように、これからの話で「人材データの一元化」とは何を指しているのか、明確にしておきたい。
ここでは、 「各社・各組織で必要とされる人材データすべてが、自在に活用できる形で格納されていること」を指す。
経営が人事機能に求めていることは、「短期・中期・長期のビジネス目標を、組織・人材の側面で支援する」ことだろう。 そのために、人事は人材の採用や育成を行い、組織開発に取り組み、戦略人事を策定し実行するのである。 高度成長期の人材や組織のマネジメントでは、労働力の量を確保し、過去の成功パターンに改善を加えながら効率よく繰り返していけば、一定以上の成果が期待できた。
しかし、グローバル化、技術革新、人材の多様化など、環境変化の幅とスピードが増していくなかで、昨日の成功が、必ずしも明日の成功に繋がるわけではなくなっている。 逆に、昨日の成功体験が、明日の発展を阻害することも珍しくない。そんな環境下では、過去の経験や属人的な勘だけに頼っていては、 人材や組織のマネジメントで成果を上げ続けることはおぼつかない。
そこで、人材・組織マネジメントの質を上げ、経営に貢献していくためには、 現状をしっかりと把握し、仮説検証をし、PDCAを回していくことが求められる、そのためには人材や組織に関わるデータを活用することが必須だという認識が持たれるようになった。 「人材データの一元化」は、そのために必要なのである。
つまり、人材・組織マネジメントの質を上げ、経営に貢献するためにデータが活用できるかどうかが、「一元化」が本当の意味で実現しているかどうかの判断基準ということになる。
「一般的に『人事データ』と言われている情報を、単にひとつのシステムにまとめている」だけでは、一元化する目的に資することができない、という観点から、 「人材データの一元化」とは言えないと考える。
日本企業の人材データ管理の現状
この話をするときに思いだすのが、子供部屋にあったおもちゃ箱だ。そこには親が沢山のおもちゃを入れてくれている。 遊び道具が一か所にまとまっているから、子供としては安心だ。ただ、「あのおもちゃで遊びたい!」と思うと、 毎回箱をひっくり返しておもちゃを床に拡げ、手でより分けながら見つけることになる。 また、親が「おもちゃ」だと思わなかったものは入っていない。 自分で別の場所にある「自分にとってのおもちゃ」を探しにいかなくてはならない。
こんな状態のおもちゃ箱だった場合、少し知恵がついた子供はどうするだろうか。
頻繁に使うもの、大好きなおもちゃは別の場所に置いて、すぐに手に取れるようにするだろう。入らなかったものについても、別の箱や場所を用意することになる。 そして、長らく使われなかったものは忘れてしまう。下手をすれば同じものをねだってしまって、 せっかく新しいタイプのおもちゃを手にすることができたチャンスをみすみす逃してしまうかもしれない。
これと同じようなことが、人事関係のシステムで実際に起こっている。既存の人事システムやタレントマネジメントシステムにデータは入っているのに、 必要なデータを欲しい形で取り出そうと思うと、まずは広範囲のデータをCSVに落してきてExcelに変換し、関数やマクロをつかって整理するしかなかった、 という経験はないだろか。
本当は使いたいデータが、既存のシステムでは思うように管理できずに、ExcelやAccessで別管理していたりしないだろうか。
そうした複数の場所から、データを取り出してきて、ExcelのVLOOKUP関数を使って寄せ集め、資料を作成していないだろうか。
こうした状況では、経営や現場から依頼されたデータをすぐに出すことが難しい。そのため、定型の資料については、システム/データベースの外で、 Excelのマクロを駆使したりAccessを使ったりして、省力化・迅速化を実現しているケースは少なくない。 しかしその対応では、定型を外れた依頼が来た瞬間に、お手上げになる。また、隠れた課題を発見したいときには、定型帳票だけを見ていても不十分である。 仮説を立てて検証するという思考活動に必要なデータを自在に取り出すことができなければ、意味がない。
もし、今使っているシステムが上記のような状況にあるとしたら、経営に資するため「一元化」はできていない、ということになる。
そして、残念ながら、多くの企業の人事関連システムが、このような状況に陥っている。高額の投資をしたにも関わらず、システム導入前と同じようにExcelでの資料作りに多くの工数をかけているという話は、残念ながら珍しい話ではない、というのがこれまでの経験だ。
そんな中でも、人材データの活用の重要性に気がつき、人材データの活用を推進していきたいと声を上げる人は確実に存在する。しかし、そこで「どんなシステムでも一元化くらいなら、大して差はないはずだ」「単なるデータの一元化。その程度なら自分たちでさっさと作ってしまえばいい」といった、「一元化」に対する認識の違いにぶつかることになる。
その結果、よく陥るのが、以下の2点の状況である。
そして、多くの場合、思ったような成果が出ずに、2,3年を経て振り出しに戻る。
つまり、人事担当者の2,3年分の工数を無駄にしたと同時に、早く気がついて人材データの活用を始めた他社から2,3年の遅れをとったということになる。 なぜ、どんなに頑張っても振り出しに戻ってしまうのか。そこには構造的な問題があって、人が量的な頑張りを投入したからといって変わる種類のものではないからだ。
それぞれの問題の本質について考えてみる。
「人事システム」「タレントマネジメントシステム」と呼ばれる、人材に関するデータを扱うシステムが数多く出回っている現在、「人材データの一元化」など、 当たり前の話だと考えている人も少なくない。実際に、「単なるデータの一元化でしょう?その程度なら自分でも作れる」、 「一元化くらいなら、どのシステムでも大差ないよね」と、直接言われることも少なくない。 しかし、15年近く日本企業の人材データ活用の支援に携わってきた経験から、人材データの、本当の意味での「一元化」の実現はそれほど簡単に実現できることではない、というのが実感値である。
話がずれてしまわないように、これからの話で「人材データの一元化」とは何を指しているのか、明確にしておきたい。
ここでは、 「各社・各組織で必要とされる人材データすべてが、自在に活用できる形で格納されていること」を指す。
経営が人事機能に求めていることは、「短期・中期・長期のビジネス目標を、組織・人材の側面で支援する」ことだろう。 そのために、人事は人材の採用や育成を行い、組織開発に取り組み、戦略人事を策定し実行するのである。 高度成長期の人材や組織のマネジメントでは、労働力の量を確保し、過去の成功パターンに改善を加えながら効率よく繰り返していけば、一定以上の成果が期待できた。
しかし、グローバル化、技術革新、人材の多様化など、環境変化の幅とスピードが増していくなかで、昨日の成功が、必ずしも明日の成功に繋がるわけではなくなっている。 逆に、昨日の成功体験が、明日の発展を阻害することも珍しくない。そんな環境下では、過去の経験や属人的な勘だけに頼っていては、 人材や組織のマネジメントで成果を上げ続けることはおぼつかない。
そこで、人材・組織マネジメントの質を上げ、経営に貢献していくためには、 現状をしっかりと把握し、仮説検証をし、PDCAを回していくことが求められる、そのためには人材や組織に関わるデータを活用することが必須だという認識が持たれるようになった。 「人材データの一元化」は、そのために必要なのである。
つまり、人材・組織マネジメントの質を上げ、経営に貢献するためにデータが活用できるかどうかが、「一元化」が本当の意味で実現しているかどうかの判断基準ということになる。
「一般的に『人事データ』と言われている情報を、単にひとつのシステムにまとめている」だけでは、一元化する目的に資することができない、という観点から、 「人材データの一元化」とは言えないと考える。
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日本企業の人材データ管理の現状
この話をするときに思いだすのが、子供部屋にあったおもちゃ箱だ。そこには親が沢山のおもちゃを入れてくれている。 遊び道具が一か所にまとまっているから、子供としては安心だ。ただ、「あのおもちゃで遊びたい!」と思うと、 毎回箱をひっくり返しておもちゃを床に拡げ、手でより分けながら見つけることになる。 また、親が「おもちゃ」だと思わなかったものは入っていない。 自分で別の場所にある「自分にとってのおもちゃ」を探しにいかなくてはならない。
こんな状態のおもちゃ箱だった場合、少し知恵がついた子供はどうするだろうか。
頻繁に使うもの、大好きなおもちゃは別の場所に置いて、すぐに手に取れるようにするだろう。入らなかったものについても、別の箱や場所を用意することになる。 そして、長らく使われなかったものは忘れてしまう。下手をすれば同じものをねだってしまって、 せっかく新しいタイプのおもちゃを手にすることができたチャンスをみすみす逃してしまうかもしれない。
これと同じようなことが、人事関係のシステムで実際に起こっている。既存の人事システムやタレントマネジメントシステムにデータは入っているのに、 必要なデータを欲しい形で取り出そうと思うと、まずは広範囲のデータをCSVに落してきてExcelに変換し、関数やマクロをつかって整理するしかなかった、 という経験はないだろか。
本当は使いたいデータが、既存のシステムでは思うように管理できずに、ExcelやAccessで別管理していたりしないだろうか。
そうした複数の場所から、データを取り出してきて、ExcelのVLOOKUP関数を使って寄せ集め、資料を作成していないだろうか。
こうした状況では、経営や現場から依頼されたデータをすぐに出すことが難しい。そのため、定型の資料については、システム/データベースの外で、 Excelのマクロを駆使したりAccessを使ったりして、省力化・迅速化を実現しているケースは少なくない。 しかしその対応では、定型を外れた依頼が来た瞬間に、お手上げになる。また、隠れた課題を発見したいときには、定型帳票だけを見ていても不十分である。 仮説を立てて検証するという思考活動に必要なデータを自在に取り出すことができなければ、意味がない。
もし、今使っているシステムが上記のような状況にあるとしたら、経営に資するため「一元化」はできていない、ということになる。
そして、残念ながら、多くの企業の人事関連システムが、このような状況に陥っている。高額の投資をしたにも関わらず、システム導入前と同じようにExcelでの資料作りに多くの工数をかけているという話は、残念ながら珍しい話ではない、というのがこれまでの経験だ。
そんな中でも、人材データの活用の重要性に気がつき、人材データの活用を推進していきたいと声を上げる人は確実に存在する。しかし、そこで「どんなシステムでも一元化くらいなら、大して差はないはずだ」「単なるデータの一元化。その程度なら自分たちでさっさと作ってしまえばいい」といった、「一元化」に対する認識の違いにぶつかることになる。
その結果、よく陥るのが、以下の2点の状況である。
今ある人事・給与システムの人事システムで本当にできないのか、努力してみる。
まずはデータを一か所に集約するだけだから、その範囲であればどのシステムでも
大差はないはず。SaaS型システムを含めて、安くて早く導入できるものを選ぶ。
大差はないはず。SaaS型システムを含めて、安くて早く導入できるものを選ぶ。
そして、多くの場合、思ったような成果が出ずに、2,3年を経て振り出しに戻る。
つまり、人事担当者の2,3年分の工数を無駄にしたと同時に、早く気がついて人材データの活用を始めた他社から2,3年の遅れをとったということになる。 なぜ、どんなに頑張っても振り出しに戻ってしまうのか。そこには構造的な問題があって、人が量的な頑張りを投入したからといって変わる種類のものではないからだ。
それぞれの問題の本質について考えてみる。