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「現場で使われないタレントマネジメントシステム」から考える。人材・タレントマネジメントシステムは、誰が使うシステムなのか。

2018.04.05


【人材・タレントマネジメントをデザインするのは誰なのか】

 確かに、日々の人材・タレントマネジメントは、現場のマネジャーが担うものです。しかし、現代の日本企業で、現場のマネジャーが部下のマネジメントだけをやっていればよいというケースはとても稀になってきています。多くの場合、自らも何らかの目標や業務を持つプレイングマネジャーです。そうした彼ら一人一人に、マネジメント能力を上げてもらい、現場力を上げていこうと考えるなら、そこには「プロ」からの、マネジメント方法に対するアドバイスやプロセスのデザインの支援が必要なのではないでしょうか。そうしたことが、人事が人材マネジメントのエキスパートとして力を発揮すべき一領域であるはずです。

 現場が担う日々のマネジメントへの支援に加えて、

 人事として現状を正しく把握して経営層と課題を共有し、意図をもって現場での人材・タレントマネジメントの方向性を打ち出し、その結果も含めた事実・エビデンス・データを管理し、会社としての人材・タレントマネジメントの質を上げていくことも、人事の重要なタスクです。


 こうしたベースの支えなしに、ポンッと一般的な"タレントマネジメントシステム"だけを現場に提供しても、勝手な解釈で暴走するか、まったく使われないものになっていくことは、当然の帰結と言えるでしょう。

 つまり、

そもそも、何故、「タレントマネジメント」を導入するのか。経営・ビジネスの成功とのリンクが明確になっているか。 ⇒目的の明確化

その中で、現場のマネジャー(課長レベル以下)や本人が果たす(果たすことを期待される)役割は何か。 ⇒グランドデザインの作成

現場のマネジャーや従業員たちの現状はどうなっているのか。 ⇒現状把握

人材データをどのように活用して、部下の人材・タレントマネジメントや自身のキャリアマネジメントをしていってほしいのか。 ⇒ありたい姿の確認

それは自社の組織文化の下で実現できそうなことなのか。 課題があるとしたら何か。その克服方法はあるのか。 ⇒ギャアップを埋めていく方法論の立案

 といったことを、人事が整理し、マネジメントしていくことができて初めて、現場でシステムが使われるようになっていきますし、それによって現場のマネジメントの質を上げることができるのです。

 つまり、「人材・タレントマネジメントシステム」は、最終的には現場・従業員が使うシステムとして機能することが期待されるわけですが、その前提として、まず、人事が自分たちの仕事の質を上げるために使うシステムでもあるべきだと言えるでしょう。

 では具体的にはどのようなシステム(ツール)が必要なのでしょうか。大きく分けると2つの要素が必要になると考えています。

自社の人事のプロとして考えていくこと、経営に提言ができる環境づくりを支援してくれるものであること。

 ◆人材・タレントマネジメントに必要となるデータが徹底的に一元化・可視化できる。
 ◆人事が手作業レベルで行っているデータ「処理」の時間を極力省力化できる。
 ◆人事が頭を使い、経営や現場に提案や支援行為をしていくためのデータ活用ができる。
 ◆経営層・ビジネストップが「人材」「組織」を考えるときに使えるレベルのデータ提供
  ができる。


自社に合った人材・タレントマネジメントを実現し続けることができるものであること。

 ◆自社で解決したい課題解決、実現したいプロセスなどを実現できる。(※やみくもに独
  自性を追求する必要はないが、自社の文化や状況に合わせたものでなければ「絵に描いた
  餅」になります。最終的に既成のパッケージシステムを導入することになったとしても、
  やはり『自社の』という視点で全体を考えることが大前提となるでしょう。)
 ◆従業員が使い易い、わかりやすいツールとなっている。


【何に対しての、良い見た目・使い勝手なのか】

 ここまで整理したところで、最後にもう一度、「何故、見た目や使い易さにこだわったのに、現場で使われなくなってしまったのか」に立ち戻ってみたいと思います。

 一般的に良いと言われる見た目や使い勝手にこだわっても、あくまでも従業員が「仕事」をするために使うものである以上、「何のためのシステムなのか」「どういうメリットがあるのか」という点について実感値をもって理解してもらわなければ、使われなくなるのは時間の問題です。なぜなら、こうした部分は、上記で挙げた「求められるツールの要素」の中では、あくまで最後の仕上げの部分を担う要素だからです。この構造を理解しないままに、最後の仕上げの部分を上位階層と考え、優先順位を他の要素の上に置いてしまうと、現場で使われないシステムになってしまう、ということです。

 目的とメリットの重要さがわかる例を挙げてみましょう。
例えば「経費精算システム」は、どんなに見た目がぱっとしていなくて使い勝手がとても悪くても、皆必ず使います。自分が立て替えた経費を返してもらうという、切実でわかりやすい目的とメリットがあるからです。一方で、見た目がスマートで、ユーザビリティが高いなと思っても、面白いニュースや最新の情報がアップデートされないニュースサイトは、すぐに見なくなるはずです。

 誤解していただきたくないのですが、見た目が重要でないとか、使い勝手を考える必要がないと言っているのでは、まったくありません。「経費精算システム」などとは異なって、今までには存在しなかったシステム、メリット感が実感しにくいシステムを、従業員全員に使ってもらおうとする段階では、わかりやすい印象や気が効いた機能があるということがプラス要素であることには間違いがありません。ただ、その優先順位をどこにおくのかを、間違えないことが重要だ、ということです。

 そして、もう一点。システムが、実のあるメリット感をもって使われ始めると、そこで求められる「良い見た目」「使い易さ」は、デモ等で感じていた「良い見た目」「使い易さ」とは異なっている可能性があります。(例えば、現場のスピード感に合わせるために、できるだけシンプルであることが最優先されるかもしれない、など)その点も、想定しておけるとベストです。


 人材・タレントマネジメントシステムを導入しても、すぐにビジネスの数字にインパクトを与えるレベルの劇的な効果が出ることは期待できません。人を育てる、組織文化を醸成させるという世界で、発展・定着というところまでみていくと、やはり一定以上の時間がかかるのが現実です。しかし、時間がかかるからこそ、今から正しく始めておかないと、人材や組織に関するシステムやデータを武器にできた企業と失敗した企業の間で、5年後10年後に大きな差となって現れるでしょう。そして、差をつけられたことに気がついたときには実質追いつくことは難しい、といった悲劇が起こりえます。できれば、5年後10年後の競争優位を生み出すために、少なくとも、投資したものが価値を生んでいないということにはならないために、本コラムを参考にしていただければ幸いです。

(完)
2018年4月5日

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