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RFPの落とし穴。時間と工数をかけたにも関わらず、システム選定に失敗するのは何故か?

2018.07.09

2.「公平」であろうとしすぎる。

【どんな問題が起こるのか】

RFPを受け取ると、「『公平』を期するために、ここから先のご質問、連絡はすべてExcelに記載してメールでお送りいただきます。そして、そこに記載されるやり取りは、提案に参加しているすべてのベンダーに共有します」「プレゼンテーションまでは、担当者たちと直接コンタクトすることはご遠慮ください」と言われることが珍しくありません。また、時に「公平」であるために、人事担当者はプレゼンテーションまでベンダーと一切接触せず、情報システム部と外部コンサルティング企業が取りまとめるといった企業もあります。そして、基本的に提案書とプレゼンテーションの内容で決定していきます。

そうしたやり方をすることで見落とされてしまうリスクがあるのが、プロジェクトに関わる人材や組織の「問題を共に解決していく力」です。

純粋に、製品やサービスの質や適合性のみを判断したいので、ベンダーの影響を排除したい、というタイプの選考を考えているのであれば、上記のような選考の進め方は合理的です。

しかし、人材のデータを一元化し、有効に活用していこうとするようなシステム導入は、会社の規模によりますが、最低でも数カ月、規模が大きくカバー範囲が広くなれば、半年から1年、更にはフェーズを分けて、数年がかりのプロジェクトになることもあります。そしてほとんどの場合、自社担当チームとベンダーの合同プロジェクトです。

また、これまでなかった新しいエリアでシステムを構築するプロジェクトであるかぎり、想定しきれていなかった問題や課題がまったく出てこないということは、ほぼありません。多くの場合、壁にぶつかったり、思ったようにいかなかったりすることを乗り越えていくことになります。そうした際には、システム導入プロジェクトに関わる「人」「組織」も重要な要素です。そうした点を見極めていくのに、

✔ Excel上での質疑応答
✔ Excelに列記された機能要件に対する○△×(マッチング率)
✔ パワーポイントの提案書
✔ 多人数の前で行われるプレゼンテーションと限られた時間の質疑応答

だけでは、システム導入を依頼しようとしている人たちや会社が、共に困難や高いハードルを越えていける人・組織なのか、その本質を見抜くことはかなり困難なはずです。日常生活でも、困難を伴うことを長時間一緒に取り組む仲間を、テキストのやりとりのみ、相手からのプレゼンテーションだけで、自信をもって決めることができるかどうか、考えてみるとわかりやすいでしょう。

その結果、プロジェクトを進める中で想定外のことや困難なことが起きたりしたときに、「そういう話は聞いていませんので対応できません」とか「それはできません」といったスタンスを取られてしまい、大変苦労したり、一部のことを諦めざるをえなかったりすることすらあります。

【こうした問題を回避するにはどうしたらいいのか】

そもそも、システム選考で「公平」が大事にされてきた背景は、以下のようなことを避けるためです。

特定のベンダーとの関係が強くなりすぎて、価格競争の機会を持たなくなり、高い価格でサービスを購入することになってしまう。
自社担当者とベンダー営業の間に癒着が起き、コンプライアンス上の問題が起こる。
一部の担当者の「好み」や「限られた知識」「イメージ」といったものだけで選考が進み、自社に最も合っているサービスを選択することができなくなる。

これらを避けようとすることは当然ですし、ここで必要とされる「公平」さは、これからも追求するべきです。

 一方で、ベンダー間の「公平」はどうでしょうか?

A社にはすべての情報を渡しているが、B社・C社には半分の情報しか渡さない。

かなりの時間がかかる提案書を準備してもらうよう依頼するわけですから、こうした不公平は、ビジネス倫理上あるべきではありません。しかし、ここから先の「公平」について、よく考えてみる必要があります。

市場でビジネスをしている会社が、自社で生み出した利益を使って、将来のビジネスの成功のために投資をするのです。一般的に担保すべき「公平」を実現したとしたら、後は、自社にもっとも適した、投資効果が望める製品、サービスを選ぶことを優先させるべきではないでしょうか。最適なものを選ぶことの障害になるものは排除すべきでしょうし、最適なものを選ぶためにできる限りのことを考え、実行すべきだと思います。

 例えば、「ベンダーからの質問とそれに対する回答はすべて公開します」という慣行。大前提として、基本的な情報は、既にすべての参加ベンダーに公平に渡されています。その先、「何が課題か」「確認しないと問題になる点は何か」といった事柄に、どこまで広く深く気がつけるかは、実はベンダーの質を見分けるひとつの重要な要素です。他ベンダーの経験や知見から出てきた情報を、それらに気がつくことができなかったベンダーにもすべて渡すことが、「最適な製品・ベンダーを選ぶため」に必要なことなのでしょうか。

釣り上げた魚(整った回答)を確認するだけではなく、その魚を自力で釣ることができる技術やノウハウを持っていること(課題発見能力)を確認することも重要なのではないか。そう考えると、「質問」「確認事項」をどう扱うのがよいのか、変わってくる可能性があります。一部の提案に漏れが出ることを懸念するのであれば、全社に知っておいてもらいたいことを取捨選択して伝えることでカバーできるでしょう。この案には、おそらく議論・反論が多数出そうですが、少なくとも、今のやり方(「お作法と言われるもの」)を、客観的に見直すひとつのポイントになるはずです。

検討をお薦めするのは、プレゼンテーションではなく、ワークショップの実施です。

できれば、無償で依頼するのではなく、小額でもいいので有償でワークショップを行ってもらうのが理想です。有償にする理由は、サービスとしてではなく正式な仕事として取り組んでもらうためです。実際にプロジェクトに携わる予定となっている担当者の時間を半日2回ほど押さえ、RFPに対しての印象や解釈、実際の機能実現について、ディスカッションをするのです。そこまですれば、難しい局面になったときに「聞いていない」「そうは思っていなかった」といった対応をするアプローチなのか、逆に新しい発想を出してハードルを乗り越える意識と実行力があるのかどうか、わかるはずだからです。(これは次の「ベンダーが『できない』と言いづらいRFPになっている」から生まれる失敗を回避するためにも重要なポイントですので、そちらに続けて説明をしていきます。)

もし、そこまではできないとしても、Excelでのやり取りだけではなく、RFPを精査してもらった後に、それぞれのベンダーと直接、膝を突き合わせて質疑応答する機会を持つというだけでも、得るものが多いでしょう。Excelやメールだけでのやり取り、他のベンダーの目があるところでの発言では見えてこない要素が、見えてくるはずです。

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